テレビや週刊誌で時折取り上げられる「ゴミ屋敷」問題。私たちはその異様な光景を見て、住人に対して「だらしない」「怠け者」といった単純なレッテルを貼ってしまいがちです。しかし、その山と積まれたゴミの背後には、本人の意思や努力だけではどうにもならない、深刻な「障害」が隠されているケースが少なくありません。ゴミ屋敷を生み出す背景には、様々な精神障害や発達障害が関わっていることが指摘されています。例えば、うつ病になると、気力や意欲が著しく低下し、日常生活の基本的なタスクであるゴミ出しや掃除すら困難になります。昨日までできていたことが、今日は全く手につかない。そんな状態が続けば、家の中はあっという間に荒れ果ててしまいます。また、発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動症)の特性も、ゴミ屋敷と深く関連します。注意力の散漫さから、どこに何を置いたか忘れやすく、物事を順序立てて計画・実行することが苦手です。片付けを始めてもすぐに他のことに気を取られてしまい、結局は部屋がさらに散らかった状態で終わってしまうのです。ASD(自閉スペクトラム症)の特性である強いこだわりが、モノを捨てられないという形で現れることもあります。他人から見ればただのゴミでも、本人にとっては特別な意味を持つ収集物であり、それを手放すことに強い苦痛を感じるのです。これらの障害は、決して本人の「甘え」や「性格」の問題ではありません。脳の機能的な特性が原因であり、専門的な理解と支援がなければ、状況を改善することは極めて困難です。ゴミ屋敷を単なる社会問題としてではなく、一人の人間が発しているSOSのサインとして捉え直す視点が、今、私たちに求められています。