私たちは長年、ゴミ屋敷の片付けと清掃に携わってきました。数多くの現場を経験する中で痛感しているのは、物理的にゴミを撤去するだけでは、この問題は決して解決しないという事実です。特に、住人の方が何らかの障害を抱えている場合、片付けは問題解決のスタートラインに過ぎません。ある事例をご紹介します。依頼主は、離れて暮らす母親の家がゴミ屋敷になっていると知った息子さんでした。お母様はうつ病を患い、長年引きこもりがちだったそうです。私たちが現場に到着すると、家は生活ゴミで埋め尽くされ、衛生状態は劣悪でした。私たちは数日かけて全てのゴミを撤去し、徹底的な清掃と消毒を行いました。見違えるように綺麗になった部屋を見て、息子さんは涙を流して感謝してくれましたが、私たちは一つの懸念を伝えました。「お母様の心のケアがなければ、また同じ状況に戻ってしまう可能性が高いです」と。私たちの仕事は、あくまで環境をリセットすることです。しかし、ゴミを溜め込んでしまった根本原因、つまりお母様のうつ病という障害そのものが解消されなければ、再びゴミは溜まり始めます。このケースでは、私たちは息子さんと協力し、地域の精神保健福祉センターと連携を取りました。片付けと並行して、ケアマネージャーや訪問看護師が介入し、お母様の精神的なサポート体制を構築していったのです。定期的なカウンセリングや服薬管理、デイサービスの利用などを通じて、お母様の生活リズムは徐々に安定し、気力も回復していきました。数ヶ月後、私たちがアフターフォローで訪問した時、部屋は綺麗に保たれていました。この事例が示すように、障害が背景にあるゴミ屋敷問題の解決には、清掃業者、医療機関、福祉サービスという三者の連携が不可欠です。私たちは片付けのプロですが、心のケアのプロではありません。それぞれの専門家が役割分担し、チームとして当事者を支える。この包括的なアプローチこそが、本当の意味での「再生」を可能にするのです。