近隣に深刻な影響を及ぼすゴミ屋敷に対し、行政が強制的にゴミを処分する「行政代執行」。この言葉には、どこか最終手段としての重い響きがあります。これは、所有者が自ら問題を解決する能力や意思がないと判断された場合に、法律に基づいて行われる最後の措置です。行政代執行は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」を根拠に進められます。まず、行政はゴミ屋敷を、放置すれば倒壊の危険や衛生上の著しい害があると認められる「特定空家等」に認定します。認定後、すぐさま強制処分となるわけではありません。行政は、所有者に対して段階的にアプローチを行います。最初は、状況を改善するよう「助言」や「指導」を試みます。対話を通じて、自主的な解決を促すのです。しかし、これに応じない場合、次のステップとして「勧告」が出されます。この勧告を受けると、固定資産税の優遇措置が解除され、税額が大幅に増加するという経済的なペナルティが科されます。それでもなお改善が見られない場合、行政はより強い「命令」を発出します。そして、この命令にも従わなかった場合に初めて、行政が所有者に代わってゴミの撤去などを行う「行政代執行」が可能となるのです。ここで絶対に誤解してはならないのは、行政が無償で片付けてくれるわけではない、という点です。代執行にかかった費用は、その全額が所有者に請求されます。その額は、時に数百万円にものぼることもあります。もし、この費用を支払うことができなければ、所有者の預貯金や給料、最終的にはその家や土地といった不動産が差し押さえられ、公売にかけられて費用が回収されます。行政代執行は、決して救済措置ではありません。それは、所有者が自らの責任を放棄した結果として下される、非常に厳しい法的処分なのです。この最終通告に至る前に、自ら助けを求め、行動を起こすことが何よりも重要です。
ゴミ屋敷の行政代執行!処分に至る最後の道